結局流されて生きてきた

流されて生きてきたから 意思を持たずに生きてきたから その報いが今

実用性と入試

あかん なんだろ、教育というものがよくわからなくなってきた。 金融教育をするようになったり、情報の授業が大切だと言われてきたり、教育全体が実用性に重きを置き始めてるんよね。 国語もその趨勢に合わせるんだったら、正解のない問いについて考える活動…

やるしかないから

朝井リョウの『何者』でも出てきたことなんだけど、他人を俯瞰的に批判したりするのは簡単なんだけど、いざ自分の番になったら何もできないってのはサイコーにダサい。 同じように社会批判なんていくらでもできるんだけど、かといっていくら批判したところで…

黒川祥子『県立!再チャレンジ高校 生徒が人生をやり直せる学校』

これはA県立槙尾高校(仮称)という学校にまつわる話。 槙尾高校は学力下位校であり、めちゃくちゃ荒れている。 そこに勤務する教員は早くこんな高校から出たいと思っている。 そんな惨状の学校を改革しようといろんな教員が奮起する物語だ。 別に進学校にし…

書くことの虚しさ

ここにどれだけ能弁に世の中の事象を書き出し、問題点を指摘しようが、 ここにどれだけ饒舌に自他への警鐘を鳴らし、生きることへの戒めを記そうが、 ここにどれだけ流暢に自分の趣味嗜好を書き連ね、自己満足に浸ろうが、 最後に残るのは虚しさだったりする…

ポリコレ配慮のなれの果て

ノーマライゼーションという考え方が普及して、障がいを持つ子どもを公立学校でも受け入れているところはけっこうある。 私の勤めている高校でも、障がい者を受け入れている。 少し前だが、こういった事例があった。 とある私立小学校で、発達障害をもった児…

正論を語ることの危うさ

現代文の教科書の中に毛利衛さんの書いた「新しい地球観」という文章がある。 私自身、これはいい文章だとは思えない。 と言ってしまうと、大変、毛利衛さんに申し訳ないのだが、学校現場でこの文章を扱う理由があまり見いだせないのだ。 まず、最初の方にこ…

くだらないことはくだらないことではないし、生きがいを与えうるものである

情報に溢れている社会だから。 考えないといけないことで山積みの世界だから。 しないといけないことが多すぎる毎日だから。 朝井リョウ『どうしても生きてる』に収録されている「七分二十四秒め」 明らかに東海オンエアをモデルとしたであろうトヨハシレン…

世界に山積する問題について言及することについて――九段理江『schoolgirl』

最近、マイクロアグレッションという言葉を知った。 マイクロアグレッションとは差別の一種で、社会のマイノリティに対して向けられる偏見や先入観が些細に見える言動を指す。 一見するだけでは差別だとわかりづらく、言った本人に加害の自覚がないというケ…

沈殿を見よ

カルガモの親は子を殺すことがある。 トリビアの泉みたいな書き方をしたが、事実だ。 YouTubeで検索をかけたらヒットする。けっこうショック。 種の存続のために必要な行為だというが、実際、それを目の当たりにしたら衝撃だろう。 しかし、それはあくまで人…

太田肇『「承認欲求」の呪縛』

承認欲求という言葉が最近いろんなところで使われている。 特に若い子たちの間で使われている気がするのは気のせいだろうか? 正月に「おもしろ荘」という番組がやっていたのだが、そこに出てきた「ぱーてぃーちゃん」、今風のトリオだなとか思いながら、何…

21世紀を生きる 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』

昔からクレヨンしんちゃんが好きだった。 漫画は全巻持っているし、途中まで映画はすべて見ていた。 その映画の中でも大好きなのは『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』だ。 この映画ではマサオくんがバスを運転するときの覚醒シー…

多様性、再考

世間にはマイノリティーに属する人がいる。 LGBTQ、アセクシャル、吃音症、場面緘黙症、発達障害、ひとより繊細な「HSP」、字を書くのが苦手だという「ディスレクシア」、万引きがやめられない「クレプトマニア」 こういった人たちは世間的に理解さ…

今村夏子『こちらあみ子』(ネタバレ含む)

映画『花束みたいな恋をした』に出てきたというこの小説。 その映画は見ていないんだけど、この作品が映画に出てくるとは、どういった映画なんだろう? と思わずにいられないのは、『こちらあみ子』が極めて怖い小説だからである。 村田沙耶香さんの小説と同…

『舞姫』『普請中』はなぜ書かれたか ~エリーゼという女性をめぐって~(大学のレポートで提出したもの)

『舞姫』『普請中』はなぜ書かれたか ~エリーゼという女性をめぐって~ 1. はじめに 『舞姫』は、一八九〇年一月、『国民之友』に、『普請中』は、一九一〇年六月、『三田文学』に発表された小説である。『舞姫』は鴎外の代表作と言ってよい作品である。そ…

「それはそれ。これはこれ」

最近、物騒な事件が多い。 ハロウィンの日に起きた地下鉄でのジョーカー事件、北新地のビルの放火、舞洲での倉庫の放火、共通テスト一日目に起きた切りつけ事件、立てこもり事件。 犯人たちがどういう生い立ちで、どういう思いで犯行に及んだのか。 そういっ…

それぞれの空間

本を読みすぎると、いけない。 たしかに、本を読むことで、筆者の主張をそのまま自分に内面化するのはよくないと思う。 すべての筆者の意見に対して従っているようでは、自分の根幹部分を揺るがされてしまう。 しかし、ときたまに自分の意見を代弁してくれる…

何者にもなれなかった

自分がない。 そのことに気づいたのはいつだったか。 多分、教員採用試験の面接試験に向けて自己分析を行っていたときだと思う。 自己分析。 「自分の長所・短所」「自己アピール」「ガクチカ」など、自分がどういう人間であるか、自分がどういったことを頑…

渡部泰明ほか『国語をめぐる冒険』

前置きなしで書いていきます。 第一章 国語は冒険の旅だ 第二章 言葉で心を知る 第三章 他者が見えると、自分も見える 第四章 言葉で伝え合う 第五章 言葉の地図を手に入れる 第一章 国語は冒険の旅だ 理想と現実。 「理想」は「こうなったらいいなという状…

野﨑まど『タイタン』

あけましておめでとうございます。 年末年始読んでいた小説を紹介して、2022年をスタートします。 あらすじ。 至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。 人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。 しかし、心理学を趣味とする内匠成果…

多様性とは? ――朝井リョウ『正欲』より

多様な性、多様な国籍、多様な病気、多様な趣味・嗜好…… 昨今の多様性ブーム。 SDGsで「誰一人取り残さない」という理念を掲げているように、これからの社会ではこの多様性の理解が必要であると声高に言われている。 確かに耳障りのいい言葉で、否定していい…

松本俊彦『自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント』

小学生の頃にリストカットを繰り返す女の子がいた。 当時の自分がどう思っていたのかはもう覚えていない。 かわいそう、という思いよりも、なんでそんなことするの? と思っていた気がする。 大学生のころにひょんなことからSNSのTLにリスカ跡の写真が…

第166回直木賞予想

今週、166回芥川賞・直木賞の候補作が発表されるということで! 候補作の予想をしてみようと思います。 もちろん全部読んでません。 全部読んでないのに候補作の予想をするという蛮行をどうか許してください。 予想① 一穂ミチ『パラソルでパラシュート』 一…

正しさの享受

自分のこと正しいと思ってるんやろ! と言われたのですが、 人間誰しも自分のことを正しいと思っているはずです。 誰かにとっての正しさと誰かにとっての正しさがぶつかることで喧嘩は生じる。 だから、価値観の異なる人間同士が共存するために、お互いにと…

朝井リョウ『武道館』

朝井リョウ『武道館』。 一気呵成。 『いちご同盟』以来ではないか、ここまで一気に読み終えた小説は。 実は、私は小説を読むのが苦手だ。 というのは、初めて小説を読んだのは大学生のときで、それまで読書をしたことがなかった(それを誇りに感じていた時…

鴻上尚史『親の期待に応えなくていい』

2018年に滋賀県内で起きた実母殺害事件。 被告は母親から教育虐待を受けていたことが明らかになり、その実態は想像を絶するひどいものだった。 被告は母親から地元の国公立大医学部医学科に入学することを強く求められ、国立大学医学部看護学科に合格するま…

お悧巧さんの憂鬱

太宰治の作品でいちばん好きなのは『葉桜と魔笛』だ。 ミステリー仕掛けの、切ない物語。 好きなセリフがある。 「姉さん、あの緑のリボンで結んであった手紙を見たのでしょう? あれは、ウソ。あたし、あんまり淋しいから、おととしの秋から、ひとりであん…

石井志昂『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』

本書は子育てに関する書である。 「不登校」というワードだけで購入してしまったのだが、教員の身である私にもなるほどなと思う部分は多くあったので結果的に買ってよかったかなと思う。 本書に登場する子どもというのは基本的に小学生・中学生あたりを指し…

しろやぎ秋吾『10代のつらい経験、私たちはこう乗り越えました』

これは作者であるしろやぎ秋吾さんがSNSで『10代のつらい経験、私たちはこう乗り越えました』と、エピソードを募り、それを漫画化した作品です。 本書がいいところは、数あるエピソードを通して、「10代の○○の悩みについてはこう解決すべきだ」といったふう…

桐光学園+ちくまプリマー新書編集部『学ぶということ』

内田樹・岩井克人・斎藤環・湯浅誠・鹿島茂・美馬達哉・池上彰(敬称略)の7人が「学ぶということはどういうことか?」という問いについて答えてくれた本である。 3人だけご紹介する。 ①生きる力を高める 内田樹 グローバル化によって海外進出を視野に入れ…