IDEA

ポリコレ配慮のなれの果て

ノーマライゼーションという考え方が普及して、障がいを持つ子どもを公立学校でも受け入れているところはけっこうある。 私の勤めている高校でも、障がい者を受け入れている。 少し前だが、こういった事例があった。 とある私立小学校で、発達障害をもった児…

正論を語ることの危うさ

現代文の教科書の中に毛利衛さんの書いた「新しい地球観」という文章がある。 私自身、これはいい文章だとは思えない。 と言ってしまうと、大変、毛利衛さんに申し訳ないのだが、学校現場でこの文章を扱う理由があまり見いだせないのだ。 まず、最初の方にこ…

くだらないことはくだらないことではないし、生きがいを与えうるものである

情報に溢れている社会だから。 考えないといけないことで山積みの世界だから。 しないといけないことが多すぎる毎日だから。 朝井リョウ『どうしても生きてる』に収録されている「七分二十四秒め」 明らかに東海オンエアをモデルとしたであろうトヨハシレン…

世界に山積する問題について言及することについて――九段理江『schoolgirl』

最近、マイクロアグレッションという言葉を知った。 マイクロアグレッションとは差別の一種で、社会のマイノリティに対して向けられる偏見や先入観が些細に見える言動を指す。 一見するだけでは差別だとわかりづらく、言った本人に加害の自覚がないというケ…

太田肇『「承認欲求」の呪縛』

承認欲求という言葉が最近いろんなところで使われている。 特に若い子たちの間で使われている気がするのは気のせいだろうか? 正月に「おもしろ荘」という番組がやっていたのだが、そこに出てきた「ぱーてぃーちゃん」、今風のトリオだなとか思いながら、何…

朝井リョウ『武道館』

朝井リョウ『武道館』。 一気呵成。 『いちご同盟』以来ではないか、ここまで一気に読み終えた小説は。 実は、私は小説を読むのが苦手だ。 というのは、初めて小説を読んだのは大学生のときで、それまで読書をしたことがなかった(それを誇りに感じていた時…

鴻上尚史『親の期待に応えなくていい』

2018年に滋賀県内で起きた実母殺害事件。 被告は母親から教育虐待を受けていたことが明らかになり、その実態は想像を絶するひどいものだった。 被告は母親から地元の国公立大医学部医学科に入学することを強く求められ、国立大学医学部看護学科に合格するま…

石井志昂『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』

本書は子育てに関する書である。 「不登校」というワードだけで購入してしまったのだが、教員の身である私にもなるほどなと思う部分は多くあったので結果的に買ってよかったかなと思う。 本書に登場する子どもというのは基本的に小学生・中学生あたりを指し…

しろやぎ秋吾『10代のつらい経験、私たちはこう乗り越えました』

これは作者であるしろやぎ秋吾さんがSNSで『10代のつらい経験、私たちはこう乗り越えました』と、エピソードを募り、それを漫画化した作品です。 本書がいいところは、数あるエピソードを通して、「10代の○○の悩みについてはこう解決すべきだ」といったふう…

桐光学園+ちくまプリマー新書編集部『学ぶということ』

内田樹・岩井克人・斎藤環・湯浅誠・鹿島茂・美馬達哉・池上彰(敬称略)の7人が「学ぶということはどういうことか?」という問いについて答えてくれた本である。 3人だけご紹介する。 ①生きる力を高める 内田樹 グローバル化によって海外進出を視野に入れ…

内田和俊『10代の「めんどい」が楽になる本』

昔はよかった、という言葉をよく聞く。 私自身、そう思っているところもある。 まず人付き合いに関して、スマホの普及から、人との距離が遠くなったように思う。 月並みな意見だけど。 SNSの普及により、ひとは承認欲求モンスターと化し、現実世界を生きてい…

瀬尾まい子『図書館の神様』

なんか先入観でこの小説を図書館司書のおばさんが中学生の男の子に文学を通して人生の教訓を垂れる話だと思ってたけど、全然違ってた。 主人公は若い女性教師(常勤講師)で文学に興味がないのに文芸部の顧問をもたされて不満に思っている。文芸部にいたのは…

言葉と思考の乖離 村上春樹『螢』から

村上春樹『螢』という小説の中で、名前のない〈僕〉の恋人(元恋人といったほうが正確か)が言ったセリフ。 「うまくしゃべれないのよ」 「ここのところずっとそうなの。本当にうまくしゃべれないのよ。何かをしゃべろうとしても、いつも見当ちがいな言葉し…

桑原朱美『保健室から見える親が知らない子どもたち』

NLPという心理療法がある。 Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラム)の略称で、別名「脳と心の取扱説明書」と呼ばれる最新の心理学であるそうだ。 「人間が苦しんだり、喜んだり、立ち直ったりする本質的なしくみ」「人間が変化し成長していく原…

齋藤孝『新しい学力』

これからの時代、「生きる力」が求められている。 文部科学省は「生きる力」について以下のように定義づけている。 ・基礎的な知識・技能を習得し、それらを活用して、自ら考え、判断し、表現することにより、さまざまな問題に積極的に対応し、解決する力 ・…

話を聞かぬ野蛮人

話を聞かない人がいる。 Twitterでも話題になっていた言葉がある。 「バカでもわかるように説明に工夫したところで、そもそもバカは説明を聞いてない。」 言葉は悪いが、まさにその通りだと思う。 そうなってしまえば、言葉など無意味と化す。 実際、人類み…

長沼睦雄『10代のための疲れた心がラクになる本』

10代にはさまざまな悩みがある。 精神的な疲れであったり、それが身体的な疲れであったりもする。 まずは、身体の不調について述べるが、私は医学に関する知識は皆無であり、それなのに「〇〇症」などと訳知り顔で書くという蛮行を、今回私が紹介する『10代…

生きづらさについて

「いい子」を演じ続けた結果、見失う生きる意味 | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net) 上の記事についてまとめていきたいと思います。 まとめるだけです。 自分の意見は排していますが、…

Jam『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ』

本作は、Jゲームグラフィックデザイナー、イラストレーター、漫画家の三つの肩書を持つJamさんの著書です。 日常で怒る人間関係の悩みをかわいらしいネコちゃんを中心に描いた漫画がたちまと話題になり、それが本書『多分そいつ、今ごろパフェでも食ってるよ…

鈴木裕介『メンタル・クエスト』

人生ハードモード。 親ガチャ。 人生周回遅れ。 などなど、よく人生は「ゲーム」にたとえられます。 たとえられるどころか、「ゲーム」を心のよりどころにして、現実世界から目をそらそうとしているひとも多くいます(それがいいか悪いかは今の時点では述べ…

働くって何?

なぜ働くの? この問いに対して、いろんな答え方ができるでしょう。 今回は、「なぜ働くのか?」という大きな問いをテーマに、つれづれなるままに記述していきたいと思います。主に、高校生・大学生に向けた話になると思います。 1.仕事って何? 2.自分の適…

石戸奈々子『賢い子はスマホで何をしているのか』

GIGAスクール構想というものがある。 これは「全国の児童・生徒1人に1台のコンピュータと高速ネットワークを整備する」という取り組みのことである。 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、2023年度までを目処に構想の実現を目指していたが、前倒しさ…

古宮昇『傾聴の基本』

聞き上手という言葉があるが、それは話を聞くのがうまい、つまり、話をしていて楽しいとか安心できるとかそういったひとのことを指すのだろう。話をしている最中に、自分の話をし始めたり、リアクションがなかったり、そういったひとは残念ながら聞き上手と…

外山美樹『勉強する気はなぜ起こらないのか』

ルンバを見て、「やる気ある」と思うひとはいないだろう。 もし、いれば、そいつはそうとうな変わり者だな。 なぜ、ルンバを見て「やる気ある」と思わないのか。 それはルンバが電力という外部からの力を得ているからである。 人間は電力などでエネルギーを…

SDGsとは何か?

SDGsとは、未来の世界のかたちだ SDGsは「持続可能な開発目標」と訳されることが多いが、「持続可能な成長目標」としたほうがわかりやすいそうだ。 今だけ成長して未来に経済的・社会的・環境的な負債を残すのではなく、持続的に成長していく。しかも、経済…

重松清『十字架』―罪の十字架を一生背負っていく。

重松清『十字架』 なかなか重い小説だった。 もちろん物理的ではなく、空気が重いのだ。 あらすじを書き記す。 以前からクラス内でいじめを受けていた中学生、藤井俊介(以下、フジシュン)は、ある日、遺書を残して自宅の庭の木で首を吊って死んだ。遺書に…

世にはびこる正義マン

私はこのブログで大きな罪をおかしている。 ちなみに罪は自覚している。 それは私の意見と筆者の意見を混同していることだ。 最近は( )内の文章を私見、それ以外は筆者の意見という分け方にしているのだが、初期のものはほとんどが混同しまくっている。 と…

Z世代は親友のいらない未来を夢見るか?

Z世代という名前は、原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』という著書を見て、初めて知った。 なぜ、「Z」なのかというと、上記の著書いわく、「アメリカでは彼らより上の世代が「ジェネレーションX」(諸説あるが1960年代初頭または…

自尊感情の低い子どもたちに声掛けを

世の中には生きづらさを感じているひとが多くいる。 老若男女問わずそういうひとはいると思うが、私は今回「子ども」に絞って書いていく。 自尊感情の低い子ども。 そもそも、なぜ子どもたちは自尊感情が低いのか? 古荘純一『日本の子どもの自尊感情はなぜ…

あえて空気を読まない、そして、援助希求力 ――諸富祥彦『教師の資質』『いい教師の条件』

いま、Twitter上で「#教師のバトン」なるものが賑わいを見せている。 確かに勤務校の担任や校務分掌の長を見ていると、その大変さに恐ろしさを感じることもある。もはや、教師の本分である授業は二の次どころか三、四の次くらいである。 私の勤務校では、生…