ザ・シュール

 コケコッコー!!!

 馬に乗るとヤギが吠えた。

 山本さんの趣味は木の手入れだ。

 街に生えている木の手入れはすべて山本さんが行っている。

「木っていうのは生きているんですよ。愛情をかけてやればかけてやるほどすくすくとまっすぐに育つんです。まあ、人間と同じですよね。あはははははは」

 山本さんはありきたりなクソ以下のクソのような馬鹿ほどクズな低レベルの意見を言うと由々しくも微笑んだ。

 僕は山本さんをクソ以下のクソだと思った。

 それはそうと僕はヤギに頭突きされて身体じゅうの骨を複雑骨折してしまった。

 ……(以降、下ネタがひどいので割愛)

 

 佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』を読んで、アルコ&ピースのANN(オールナイトニッポン)の存在を知った。

 ラジオは毎週木曜日の27:00~28:30に放送されていた。2016年3月24日に放送終了している。

 アルピーは今、「D.C.GARAGE」っていう名前のラジオをしているのだが、たまに聴く。

 

 冒頭の支離滅裂の話は、アルピーの『家族』というコーナーで、「本当の家族には言えない君の日常を送ってください」という募集内容で、リスナーたちが「父ちゃん、兄ちゃん…、聞いて欲しいことがあるんだ」という言い出しから、「俺、好きな人がいるんだ」といったふうな家族には言えないような相談・報告をするといったものだったらしい。

 甘酸っぱい話とかやりきれない話とかいろいろ聞けるようなコーナーのはずが、アルピーのリスナーはぶっ飛んでいて、ボケにボケまくった内容のものを送って来たらしい。

 その中に、「サイコ」と呼ばれる、最高に狂った内容のものを送る輩が数名いる、と。

 一番初めに載せたのが「サイコ」と呼ばれるものだ。

 農機具(リスナーの名前)さんは基本的にこんな感じのおたよりを出していた。

 

「父ちゃん、兄ちゃん…聞いて欲しいことがあるんだ。

 コケコッコー!!!

 馬に乗るとヤギが吠えた。……」

 

 意味不明。

 でも、俺はこういった意味不明なものに笑ってしまう。

 

 こういった支離滅裂な頭のおかしいような話が好きだし、笑ってしまう。

  

 筒井康隆『パプリカ』を原作とした、今は亡き今敏監督の同名のアニメーション映画。渡辺謙も出演している『インセプション』と同じ「夢」を題材にした作品。

 以下のようなセリフがある。

 

 うん。必ずしも泥棒が悪いとはお地蔵様も言わなかった。

 パプリカのビキニより、DCミニの回収に漕ぎ出すことが幸せの秩序です。

 五人官女だってです!

 カエルたちの笛や太鼓に合わせて回収中の不燃ゴミ吹き出してくる様は圧巻で、

まるでコンピューター・グラフィックスなんだ、それが!

 総天然色の青春グラフィティや一億総プチブルを私が許さないことくらいオセアニアじゃあ常識なんだよ!

 今こそ、青空に向かって凱旋だ!

 絢爛たる紙吹雪は鳥居をくぐり、周波数を同じくするポストと冷蔵庫は先鋒をつかさどれ!

 賞味期限を気にする無頼の輩は花電車の進む道にさながらシミとなってはばかることはない!

 思い知るがいい!三角定規たちの肝臓を!

 さぁ!この祭典こそ内なる小学3年生が決めた遙かなる望遠カメラ!

 進め!

 集まれ! 

 私こそが! お代官様! 

 すぐだ! すぐにもだ! 

 わたしを迎エいれるノだ!!

 わけわからん。

 笑いこそしないが、面白いと感じてしまう。

 

 安部公房もシュール。『壁――S・カルマ氏の犯罪』は終始意味不明だ。

 

 そうだ、俺はシュールな世界観が好きなのだ。

 

 シュールな笑いが好きなのだ。

 

 ただ、シュールは人を選ぶ。

 

 例えば芸人の「天竺鼠」、「トム・ブラウン」とかはシュールな芸をしていると思っている。だから彼らの評価は二分されている。

 アルピーもそうか。強烈な世界観をつくっている。野生爆弾も。

 

 彼らのシュールな笑いと俺の笑いのツボは合致する。

(俺が今一番好きな芸人はジャルジャルだけど。彼らもけっこう人を選ぶ芸人だな)

 

 シュールは一線を越えると「恐怖」になる。

 悪夢を見ているような恐怖感を覚えるみたいに。

 

 判りやすい例が「トム・ブラウン」の芸を見ているときだ。

 何あれ? 怖っ。

 そんなふうに思うかもしれない。

 でも、俺はけっこう好きだったりする。

 

 「笑い」と「恐怖」の境界は薄い膜でできているんだろう。

 バナナマンの「ルスデン」、ラーメンズの「採集」、千原ジュニアの「ダンボくん」……全部「怖いコント」とされているもの。(かもめんたるの「コンタクトレンズ」とかも?)

 人を笑かそうとして、結果的に怖がらせるって。

 んー、やっぱ、「笑い」と「恐怖」はごく近い感情なのかな。

 

 ちょっと、脱線した。

 

 シュールの笑いは好きだけど、声を大にして「シュール最高!!」と叫ぶ気にはなれない。

 人の死体が好きでさあ、とか、グロ画像見たい、とか、人と感性が違う俺かっこいいとか思っちゃってんのと同じくらい、ダサい気がする。

 

 だから、こういったシュールな笑いが好きだって気持ちはこのブログにだけ書き留めておこうと思う。

 

 あと、シュールな映像も好き。

 

 ディズニーの『ダンボ』の「ピンクの象」とか

 さっき挙げた『パプリカ』の「無機質のパレード」とか

 ジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』の「百鬼夜行」とか

就活狂想曲」(https://www.youtube.com/watch?v=M6rb6kknj3A)とか

ドラえもん バトルドームも出た!!」(https://www.youtube.com/watch?v=MDEG1oc7LN4)とか

 

    ブログにだけに書き留める。

 シュール、好き

 ザ・シュール

 

 

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