坂口恭平『苦しい時は電話して』

 苦しい時は電話して

 

 あ、別に病んでないです。

 

 ただ、気になって手に取っただけ。

 

 たとえば、心が病んでいるひと、自傷しようとしているひと、自殺を考えているひとにどんな支援ができるだろうか? とか、そもそもどういったことを考えているのか? とか、そういったことを考えたいなって思ったから、購入してみた。

 

 まず、この本、表紙に電話番号が載っているという(しかも個人の)、まずそこに驚いた。

 

 作者の坂口恭平氏は自殺者をゼロにしたいという思いから、死にたいひとが相談を受けられるサービスを開発したそうだ。

 それが『いのっちの電話』。

(実際、YouTubeで坂口氏が電話対応をする動画があったので見てみた。

 正直、うーーーーーーん、ってところ。

 坂口さんは無料でこういったサービスを行っているため、決して悪気はないし、むしろほんとうに自殺をゼロにしたいと願っているのだろうが、話を聞かず、声だけを聴いて、『あなたは大丈夫ですね』とか言ってしまうのはどうかと思っちゃう。

 まあ、今回はその善し悪しには触れないことにする)

 

①反省禁止

 

 苦しいとき、(特に優しい人は)反省をしがちである。

 

 反省しすぎるのはよくない。

 自分が悪い、自分のせいで、自分が駄目だから……

 そうやって塞ぎこんでいるひとを見るのは気分がいいものではないし、本人もつらい。

 坂口氏はこういった反省状態を「乗っ取られた状態」にたとえている。

 だから、今反省している自分は、そういった意味で正常な「自分」でもなければ、ほんとうの「自分」でもないのだ。

 その反省している自分をほんとうの自分だと思ってつらくならないで、とそういったメッセージ。

 

②悩み続けることができるのはもはや才能

 

 悩み続けるひと。

 それは言い換えれば「24時間悩み続けることができる人」である。

 自分とは何か、自分が生きている意味とは何か……哲学者じゃん! ちょっと前なら、立派な職業人だったわけだ。

 こういう悩み続けるひとを、坂口氏はたいしたもんじゃありませんか! と言ってくれている。

 確か、一日のうちに一回は筋トレをすると決めてもなかなか行えないのに、宿題をするのにまったくやる気が湧かないというのに、「悩む」ことは毎日絶えずしている。頭を使って考え続けている。確かに、立派なことなのかもしれない。

 

 ただ、反省や自分への攻撃をやりすぎると、疲れてくる。

 じゃあ、休みましょうよ。

 たまにはどこか遠いところへ行くとか、料理するとか、ふだんやらないことをやってみようよ、ということなのだ。

 

③毎日「つくる」時間を設ける

 

 死にたい、と思っているひとに「何がやりたい?」と聞いてみる。

 すると、「映画を撮りたい」「絵を描きたい」といった解答が多く出る。しかし、映画監督や漫画家・画家などになるのはほぼ無理だ。しかし、彼らがほんとうに「映画を撮りたい」「絵を描きたい」なら、お金にならなくても、やってみればいいのだ。

 映画を撮るにしても絵を描くにしても、それらは「創造」であり、坂口氏は「創造」は「苦痛自体が力となりうる行動」だと述べている。

 悩むのは、身体の中から言葉は湧いていることと同じだ。

 間違いなく、考える力を持っている。

 考える力さえあれば、「つくる」ことができる。

(何を「つくる」かはその人次第)

 日々の中で「一時間」だけ、創作の時間をとってみるのもいいのかもしれない。

 それが毎日を生きる中での楽しみの時間になりうる。

 それが毎日を生きる理由にもなる。

 

 今回は、非常に短いが、ここで締めておく。

①反省禁止

②悩み続けることができるのはもはや才能

③毎日「つくる」時間を設ける

 以上の三点を踏まえて、頑張っていきましょう。

(誰に言っているんだ?)

 

 

苦しい時は電話して (講談社現代新書)

苦しい時は電話して (講談社現代新書)