ビニール傘の憂鬱
雨
一粒一粒に哀しみの粒子と情熱の灰が詰まっていて
雨
見えぬ歓びを感じる暇もなく僕らは歩く
雨
ギャロップがどこかで聞こえる
すぐ上なのに、僕らは前を見る
もしくは下か
雨
憂鬱な日にはコーヒーを飲もうと思っていたのにさっき買ったのは緑茶だった
雨
いつまで降るのかビニール傘は思う
別に雨に打たれたくて生まれたんじゃないビニール傘はやるせない気持ちで烏を見る
夢が死んだ夢を見た夢遊病のカブトムシは
愛した過去すらも平気に壊す
そんな、雨
どこかで落としたハンカチは確か黒猫の刺繍が入っていた
そんな、雨
いつ止むの?
きいろいかっぱの男の子
街は、すっかり陰鬱な泡にまみれ
言葉を腐食させていく
そんな、雨
ビニール傘は思う
息苦しい中、意味のないことをするのが人生だ、と
晴れた日には
忘却の彼方へ
閉ざされた蝋燭の灯を拝む