サメくんの苦悩の解説

安部公房の『他人の顔』という小説がある。

 

化学研究所での事故により顔が溶けてしまった男の話である。

この小説が面白いところは、その男が「仮面」をつくり、自分の名を伏せて、妻を誘惑し、うまく籠絡できたのだが、男は「仮面」を被った自分自身に嫉妬するというところだ。

 

自己疎外、サルトルの対他存在論とか関わってくるんだろうが、あえて幼稚的な感想を書くとすると、「結局顔かよ」という感想だ。

 

『他人の顔』では、妻がその仮面の男を夫であることを見破っている。だから「結局顔かよ」という感想は間違ってるよ。

でも、男目線で話すと「結局顔かよ」だからね。相手がたとえ「中身だよ」と思っても。

 

そういった思いで「サメの苦悩」を書いたんじゃないかな。

一年前、暇だったある日に書いたお話。

 

そういえば、昔夢想したことがある。

この世界の人々が全員顔を決められたら、という仮説。そしたら、今まで自分自身に自信を持てなかった人とか、引っ込み思案な人とかが、秘めていた能力を発揮するかもしれないなぁと思った。変な話、引きこもりとか減るんじゃないかな?   引きこもりの人とか少なからず自分の容姿にコンプレックスあると思うんよ。

 

まあ、夢想したところでなんだって話だけどね。