古宮昇『傾聴の基本』

 聞き上手という言葉があるが、それは話を聞くのがうまい、つまり、話をしていて楽しいとか安心できるとかそういったひとのことを指すのだろう。話をしている最中に、自分の話をし始めたり、リアクションがなかったり、そういったひとは残念ながら聞き上手とはいえないだろう。聞き上手のひとは、きっと自分の話に親身になって聞いてくれるとか、そういったひとのことを指す。これは、つまり……共感的姿勢を示してくれるひとのことだ。これは、つまり……「傾聴」できるひとのことだ。

 

 ……今回、「傾聴の基本」ということで、傾聴の仕方について主に記述していく。

※ここでは「聞き上手」のおける「聞く」という字ではなく、「聴く」という漢字を用いる。また、「聴き手」「話し手」という言葉を頻繁に用いるが、「聴き手」は「カウンセラー」や「教員」といった、いわゆる話を聴く立場で、「話し手」は「カウンセリングを受ける側」や「生徒」といった、話、相談をする側のことを指す。

 

 

 

1.話し手のことを共感的に理解する

 

 傾聴には、聴き手から話し手への理解が欠かせない。理解といっても、決めつけのことではない。傾聴に必要な理解とは共感的理解であり、それは評価や判断ではなく、話し手の経験、感情、考えなどをなるべく話し手の身になって理解することである。

 

 怒る保護者に対して、教員はどう対応する必要があるのか? 

 例えば、その怒りの内容が、娘がクラブ活動について期限付きの謹慎処分になったということだったとする。そこでクラブの顧問の先生のことを激しく批判したり、教育委員会に訴えるとまで言ってしまう。

 ここで必要なのは「なぜこのお母さんはここまで怒るのか?」という疑問である。その疑問を解決するためには、母親の気持ちに理解を示すことが重要となる。「『大切なお嬢さんが邪魔者扱いされた』と感じてお母さんはすごくおつらかったんですね」といったふうに、理解的な応答をするのだ。

 

 傾聴を実践するときには、話し手が表現している感情を味わおうとすることが大切である。そのため、「笑顔になってほしい」という気持ちを押し付けようとするのはよくない。話し手が笑顔になりたいと思っていないかもしれないからだ。

 かといって、感情に吞まれるのもいけないことだ。たとえば、こんなことがあったと憤然とした生徒から話を聞いて、教員が自分まで怒ってしまうのは、なにか違うだろう。その生徒が求めていたのは、共感であって、いっしょに怒ってほしいわけではないのだ。

 また、体験したことないつらさを聞いて、共感ができないといった悩みだってあることだろう。たとえば、離婚経験がない人間が離婚した人間のつらさを共感するのは難しいように思える。しかし、たとえ聴き手が離婚経験がなくとも、別離の苦しみ、孤独の不安、将来への不安、挫折の苦しみなどを味わったことはあるだろう。そういったかつて感じたそれらの感情のおかげで、聴き手の苦しみをできるだけありありと想像することができれば、それでいいのである。

 

 話し手が語っている出来事について、聴き手側が同じ経験をしたことがなくても、同じ感情を感じた経験は持っている。だから、傾聴するとき、そういった感情を話し手の身になって想像して傾聴すれば大丈夫なのだ。それに表面的に同じ経験をしたひとが、かえって話し手の気持ちを早とちりしてしまい、理解を誤ってしまうことだってあるのだ。(例えば、話し手が離婚の苦しみの相談をしているとき、離婚経験のある聴き手が自らの経験をもとに、夫(妻)のことなどすぐ忘れろ、などといったことを訳知り顔で話してしまう方がよくない)。共感において重要なのは、離婚や不登校といった表面的なことがらではなく、それらのことがらに関わる個人的な経験だ。話し手にとってどんな経験であるかを教えてもらおうとするのが傾聴である。たとえば、ライブに行ったひとの心境をひとくくりで「楽しかったね」と言ってしまうのはあまりに表面的なことで、実はそのひとはライブに行ったが思ったより楽しめずにいて苦痛を感じていたのかもしれない。そんなふうに間違えた判断をしてしまわないように、聴き手は個人的な判断をすぐに下すのではなく、話し手がわかってほしいことをなるべく話し手の身になって理解することを心掛けるべきである。

 

 よくひとを偏見の目で見ることがある。レッテルを貼ることがある。

「このひとは神経質だなあ」「自己中心的だなあ」といったふうに。

 しかし、そういったレッテルを貼ってしまうと、それ以上のことを考えられなくなってしまう。傾聴するときは、話の内容を聴き手の物差しで判断するのではなく、話し手がわかってほしいと願っていることを、なるべく話し手の身になって理解するべきである。たとえば、「心理学は面白くない」という発言があったとする、するとそう言ったひとはこの発言を通して何を伝えたかったのかを考える。ひょっとすると、かつては心理学に関心があったのに、心理学でひとを救えないことを知ってしまい、絶望してしまったのかもしれない。そんなふうに想像してやるのが傾聴である。傾聴とは、話し手が表現していること、伝えたいことや気持ちを、できるだけ話し手の身になって想像して理解し、理解したことを相手に言葉で返すことだ。

 

2.そのままの話し手を受容する

 

 私たちの本音には「べき」や「正しいこと」に反する気持ちがある。そして、「べき」の正論を言われてしまうと、本音が話せなくなってしまう。

 まず、話し手の本音を引き出す。そして、そこで「正しい」「正しくない」を判断するのではなく、その話し手の気持ちを話し手の身になって理解し、共感し、受容することも必要である。

 世の中の倫理や道徳は、人間の二面性があるという本質に反している。「勤勉であるべきだ」というたいそうなことを掲げる人間だって、「勤勉でない」ときはある。倫理や道徳は、人間の本質に背く不自然なものだと理解しなければならない。

 

 自分の経験を話すのがいいアドバイスではない。

 たとえば、友だちをつくりたいと相談を持ちかけてきた人に「私も友だちがいなかったけど、そのおかげで勉学に打ち込むことができた」などと自身の体験を引っ張り出して、それらしいことを言う。これは相談した側にとっては、何の役にも立たないアドバイスだということになる。

 人が悩みを打ち明けるときは、解決策を教えてほしいというよりも、まずは「気持ちをわかってほしい」と求めていることが少なくない。だから、正論を聴き手側が言ってしまっても、それは逆効果になることもあるのだ。

 

 その場しのぎの励ましや慰め、自分の自己価値観を満たすだけのアドバイスはある種無責任である。たとえば、不登校の生徒に対し、「不登校は悪くない。世の中いろんな選択肢がある」といったことを軽率に(深遠な考えがあるなら別)言ってしまうのはよくないのだ。

 

 誰かの行動にイライラして、それを怒りとしてぶつけてしまうのはよくない。そうではなくて、相手のためを思い、不安に思い、その不安を素直に伝えた方がいい。

 

3.自分の心に素直であること

 

 傾聴するのが難しいとき、話し手に非があると決めつけてはいけない。その理由を自分の中に探し、解決に向けて努力することが傾聴力のアップにつながる。

 話す内容に私たち自身の未解決の心の問題が絡んでいるとき、共感し受容することはできなくなる。たとえば、かつていじめを受けた経験があり、それを何とか乗り越えた人が聴き手だとして、その聴き手が、いじめを受けているという悩みを持った話し手に、「自分はこうやって乗り越えてきた」と説教したくもあるが、それでは傾聴とは言えない。自分が正しく、相手が間違っていることを証明しなければならない、という思い込みを取り外すべきである。相手を言い負かそうとするのは傾聴ではない。

 相手より優位に立とうとする心の不安定さや弱さを手放し、相手の身になって理解する方が、相手から尊敬も協力も得られることだろう。

 まず、自分の心に素直になる。つまりは、自分自身の心の問題を解決する。自分の事を大切にできない人は、人のことも大切にできない。

 

4.傾聴がもたらす人間関係の変化

 

 「勉強すべきだ」「失敗してはいけない」「優秀でなければならない」といった「~すべき」「~でなくてはならない」という「べき」思考(と呼ぶことにする)から脱す必要がある。その「べき」思考を脱すことで、私たちは楽になる。心が緩むのである。自分のことがなんだか好きだ。そのままの自分がいい。人が好き。そんなことを思うようになる。

「努力すべきだ」ではなく、自分の可能性を伸ばしたい、自己実現したい、そういう思いが端を発し、「自分で決めた目標を達したい」から「もっと上達したい」から「もっと学びたい」から、努力するようになる。そのとき、努力することに意味を見出す。

 つまりは、自分らしさが輝きだすよう援助するのが傾聴なのだ。

 傾聴は「人間は本質的に成長を求めており、善良で社会的である調和を好んでいる」という基盤がある。

 

 過去のトラウマによる心の傷つきが深い話し手は、過去を話そうとしない。

 責められたり、否定されたり、馬鹿にされたり、軽んじられたり、無視されたり、懐疑的になる。もしかすると、優しそうに話を聞いているこの人も同じようにされるんじゃないか、とすら思ってしまう。このように、過去の誰かに対する感情、思考、行動パターンを今の人間関係において繰り返す現象を「転移」と呼ぶ。

 親から無条件に愛された実感が乏しいまま育ち、その傷つきが癒えていないひとほど、強い転移反応を示す。例えば、愛情や関心を過剰に求めたり、優しく温かい親の理想像を別の人に求めたりする。しかし、その理想にぴったり合わないことから転移の欲求は満たされず、「裏切られた」と感じてしまう。

 転移反応が強い人ほど、怒り、傷つき、寂しさ、不安など、苦しみの多い人間関係に陥る。人への怒りや不信感がさらに増幅するような経験を繰り返す。クレーマー、モンスターペアレントがいい例だ。

 

5.傾聴技法の基礎

 あらかじめ傾聴終了時刻を決める。

 話し合いは〇時まで、この場所で行う。といった具合に初めに宣告しておくことで、その時間内に集中して聴ける。もし、話し合いがいつ、どこで始まるかわからないし、いつ終わるかわからないとなると、対話の途中で「この話し合いはいつ終わるのだろう」と時間が気になって、話し手に集中することができなくなってしまう。

 だから、お互いのスケジュールを確認し、何時から何時まで、どこそこで話を聞こうというふうにすることが傾聴において大切なのである。

 

6.傾聴におけるボディーランゲージ

 メラビアンの法則というものがあるこれは会話やコミュニケーションの際に相手に与える印象を、言語情報・聴覚情報・視覚情報の3つの要素を数値で表したものだ。本法則では、言語情報が7% 、聴覚情報が38% 、視覚情報が55% の割合で、相手の印象に影響を与えるとされていることから、別名「7-38-55ルール」とも言われる。

 視覚情報とはつまり身体言語のこと。表情、身振り、姿勢など。それらによって、「私はあなたに関心があります」と伝えている。

 つまり、聴き上手になるためには、まず、「私はあなたに関心があります。あなたの話を聴きたいと思っています」と伝えることが重要であるのだ。

 まずは、姿勢。

 相手に身体を向ける。

 次に、うなずき。

 相手の話にしっかりうなずくことで「あなたの話を聴いているよ」と伝えることになる。(はたから見ればうなずきが多すぎるように見えても、目の前の話し手からは「すごく話しやすい」と感じることもある)

→うん、ふん、はい、ええ、そうか、ほう、わかる、なるほど …など

 

 話し手への理解を言葉にして返すことも必要。

 例えば、

 

話し手「どうして俺があんな理不尽な言われ方をしなきゃならないのか、わからないよ」

聴き手「理不尽な言われ方をして本当に嫌だったんだね」

 

 

 少々、わざとらしい感じはするが……

 次に、聴き手がキーワードを短く繰り返して会話して進んでいく例を。

 

話し手「そうしたらね、夕立になったの」

聴き手「え? 夕立!」

話し手「そう、まさかそうなるとは思わないから傘がなくて、でも貸してくださいなんて言いづらいし」

聴き手「貸してなんてねえ……」

話し手「そう。言えないから、どうしようって、困ってたの」

聴き手「それは困るね」

 

 

 レスポンスのキーワードは、話の内容の大切な部分だけを抜き出していった方がいい。余計なところを繰り返してしまうと、話し手は話しにくくなる。

 これは、話し手が伝えたい要点を理解することにつながる。

 

 例えば、以下のように。

 

話し手「ええ、山田さんも私に気付いてくれて、よかったら駅まで傘に入っていきませんか、って言ってくれたの」

聴き手「へえ、山田さんのほうから親切に言ってくれたのね」

話し手「そうなの」

聴き手「優しくしてくれたからうれしかったのね」★

話し手「それにね、話してみたら意外に優しいし、話も面白いし」

聴き手「へえ、意外にいい人だったんだ」

話し手「そうなの、会社でもあんなふうに素直にすればいいのに」

聴き手「会社では付き合いにくそうな感じに振舞うのが残念なのね」

話し手「そうよ、もったないわ」

 

 

 ちょっと、★のところはくどい気もするんだけど、だいたいこんなふうに、相手が言いたいこと、伝えたいことをつかんで、傾聴する。

 例えば、最初の話し手の「ええ、山田さんも私に気付いてくれて、よかったら駅まで傘に入っていきませんか、って言ってくれたの」という言葉に対し、「山田さんが歩いてきたのね」といった的外れで、相手が別に伝えたいことじゃないことを言っても、話し手をイライラさせてしまうだけだ。ここでは話し手が山田さんが親切にしてくれたという事実を伝えたいのだから、その意図を汲むべきである。

 

 次は、話し手が感情を伝えたいとき。

 

話し手「今日は寒いわね」

 

 言葉としてみると、どういう感情かわからないが、実際、話し手がおっくうそうな表情でそう言うのと、明るい表情で言うのとでは、返す言葉は変わってくることだろう。前者なら「外出るのめんどくさい?」とかだし、後者なら「うれしそうだね」とか言える。

 つまり、話し手の感情に合わせて、やり取りをする。これは共感的姿勢を示しながら、話し手にあった感情の言葉を言語化するなりして言葉をかける、ということだ。

 

 

話し手「こんなの買っちゃった」(悲しそうな顔)

聴き手1「いいじゃんそれ!」(←共感性に欠ける)

聴き手2「もったいないことしたんだね」(←相手の表情を読み取り、共感)

 

 

 と、こんなふうに。

 

 また、話し手の感情の強さに合わせて応答する。

 例えば、

 

 

話し手「(淡々とした様子で)今年ね、震災にあったんですよ」

聴き手「(いかにも心配そうに)えええ! そうなんですかあ!」

 

 

 と、話し手の聴き手の間にテンションの差がある。話し手が淡々と話しているのなら、聴き手もそのテンションに合わせないといけない。もしかすると、話し手は震災に遭って、家族、親戚、友人が被害に遭い、苦しい思いをしたことを吐露しようとしていたのかもしれないのに、仰々しい反応を見せてしまうのは、話し手に失礼になってしまう。

 だから、この場合、聴き手は「そうなんですか」といった飾らない、相手の感情に合わせたレスポンスをする。

 

 質問をうまく使って話をスムーズに進める。

 たとえば、

 

 

話し手「今年ね、震災にあったんですよ」

聴き手「え? 地震にあわれたんですか?」

話し手「はい。かなり揺れました」

聴き手「お怪我はありませんでしたか?」

話し手「ええ、私は。しかし、妻が……」

 

 

 といった感じで聴き手が話し手の話の流れに沿って、話し手が話したいことを話したくなるように質問をしている。

 しかし、悪い例としては、

 

 

話し手「今年ね、震災にあったんですよ」

聴き手「いつですか?」

話し手「昨月です」

聴き手「どこですか?」

話し手「茨城です」

聴き手「マグニチュードは?」

話し手「M5くらい」

聴き手「へえ」

 

 

 ……と、まるで事情聴取のような進め方。

 ここまでひどくはないにしても、カウンセラーのなかにもこういったふうに根掘り葉掘り質問攻めをするひとが少なくないそうだ。

 聴き手は相手が話したいことを話せるようにうまく質問をしたりして話を進めていくことが求められるのだ。相手のことを知りたいからといって、直接的な質問をバンバンと投げかけるのは違うのだ。

 

7.傾聴の発展版

 

 話し手が沈黙してしまった場合。

 沈黙には二種類ある。

 ひとつめは、話し手が自分の考えや感情を吟味している沈黙。この場合、聴き手は深くゆったり呼吸しながら、身体をゆるめてじっと待つのみである。

 もうひとつは、話し手が話せなくなっている沈黙。「相手に拒否されり馬鹿にされたりするかもしれない。だから、あのことも話せない」と心が自動的にストップをかけてしまう沈黙である。これは聴き手の共感的な理解が十分に伝わっていないから起こることだ。つまりは、話し手を信頼していないということだ。もしくは話し手の心につらすぎる感情がわきあがってきそうになって、それを押さえているのからだ。この場合、聴き手が話し手の内容の特に大切なポイントを短く繰り返して理解をしめすことが求められる。

 

 相手が心の傷を負っていて、本音を話そうとしない場合。

 相手に話を促すのはかえって逆効果である。傷ついた皮膚が自己治癒力の働きで回復するように、心の傷も自己治癒力で治っていくものだ。だから、聴き手は話し手の心の自己治癒力を待つのだが、その働きを促すのは、話し手の在り方をそのまま尊重し、話し手の気持ちをその人の身になって、理解する、傾聴の人間関係だ。

 

 たとえば、「好きな異性にあんな手紙を書いて渡したけど、あんなことをしたのは悪かったでしょうか? 私は嫌われているのでしょうか?」という質問が来たとき、「大丈夫だと思いますよ」と、ただ質問の応答するのでは、話し手は納得しない。どうしてか? それは、話し手の質問が、実は質問ではないからだ。質問というかたちで、何かの感情や思いを婉曲に表現しているのだ。だから、何が表現されているのかを理解しようとするのが、傾聴するときの態度である。

 

8.まとめ

 

1.話し手のことを共感的に理解する

 

①傾聴には、聴き手から話し手への共感的理解が欠かせない。

②傾聴を実践するときには、話し手が表現している感情を味わおうとすることが大切である。

③話し手が語っている出来事について、聴き手側が同じ経験をしたことがなくても、同じ感情を感じた経験は持っている。だから、傾聴するとき、そういった感情を話し手の身になって想像して傾聴すれば大丈夫。

④傾聴とは、話し手が表現していること、伝えたいことや気持ちを、できるだけ話し手の身になって想像して理解し、理解したことを相手に言葉で返すことだ。

 

2.そのままの話し手を受容する

①私たちの本音には「べき」や「正しいこと」に反する気持ちがある。そして、「べき」の正論を言われてしまうと、本音が話せなくなってしまう。まず、話し手の本音を引き出す。そして、そこで「正しい」「正しくない」を判断するのではなく、その話し手の気持ちを話し手の身になって理解し、共感し、受容することも必要である。

②自分の経験を話すのがいいアドバイスではない。

③その場しのぎの励ましや慰め、自分の自己価値観を満たすだけのアドバイスはある種無責任である

④誰かの行動にイライラして、それを怒りとしてぶつけてしまうのはよくない。そうではなくて、相手のためを思い、不安に思い、その不安を素直に伝えた方がいい。

 

3.自分の心に素直であること

 

①傾聴するのが難しいとき、話し手に非があると決めつけてはいけない。その理由を自分の中に探し、解決に向けて努力することが傾聴力のアップにつながる。

②まず、自分の心に素直になる。つまりは、自分自身の心の問題を解決する。自分の事を大切にできない人は、人のことも大切にできない。

 

4.傾聴がもたらす人間関係の変化

 

①「~すべき」「~でなくてはならない」という「べき」思考(と呼ぶことにする)から脱す必要がある。

②過去の誰かに対する感情、思考、行動パターンを今の人間関係において繰り返す現象を「転移」と呼ぶ。転移反応が強い人ほど、怒り、傷つき、寂しさ、不安など、苦しみの多い人間関係に陥る。人への怒りや不信感がさらに増幅するような経験を繰り返す。

 

5.傾聴技法の基礎

あらかじめ傾聴終了時刻を決める

 

6.傾聴におけるボディーランゲージ

①視覚情報(表情、身振り、姿勢など)によって、「私はあなたに関心があります」と伝えている。つまり、聴き上手になるためには、まず、「私はあなたに関心があります。あなたの話を聴きたいと思っています」と伝えることが重要であるのだ。

②話し手への理解を言葉にして返すことも必要。

 レスポンスのキーワードは、話の内容の大切な部分だけを抜き出していった方がいい。余計なところを繰り返してしまうと、話し手は話しにくくなる。

③話し手が感情を伝えたいとき。話し手の感情に合わせて、やり取りをする。これは共感的姿勢を示しながら、話し手にあった感情の言葉を言語化するなりして言葉をかける、ということだ。

④質問をうまく使って話をスムーズに進める。聴き手は相手が話したいことを話せるようにうまく質問をしたりして話を進めていくことが求められるのだ。

 

7.傾聴の発展版

①話し手が沈黙してしまった場合。

 沈黙には二種類ある。

 ひとつめは、話し手が自分の考えや感情を吟味している沈黙。この場合、聴き手は深くゆったり呼吸しながら、身体をゆるめてじっと待つのみである。

 もうひとつは、話し手が話せなくなっている沈黙。この場合、聴き手が話し手の内容の特に大切なポイントを短く繰り返して理解をしめすことが求められる。

②相手が心の傷を負っていて、本音を話そうとしない場合。

 心の傷も自己治癒力で治っていくものだ。

③質問というかたちで、何かの感情や思いを婉曲に表現するときがある。だから、何が表現されているのかを理解しようとする。