やりたいことを見つけるために

 まず、初めに今回は以下の本を参照したことをここに述べる。

 

ビル・バーネット、デイブ・エヴァンス『スタンフォード式 人生デザイン講座』(ハヤカワ ノンフィクション文庫)

 

八木仁平『「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド』(KADOKAWA

 

森岡毅『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』(ダイヤモンド社

 

高橋佳子『自分を知る力 「暗示の帽子」の謎を解く』(三宝出版)

 

前田裕二『メモの魔力』(幻冬舎

 

鈴木祐『科学的な適職 4021の研究データが導き出す最高の職業の選び方』(クロスメディア・パブリッシング)

 

 

 自分が何をしたいのか判らないひとは多いかと思うし、私もそうだ。

 じゃあ、どうすればいいのか?

 悩んだところで時間の無駄だ。

 簡単な話で、答えは灯台下暗し、「自分を知る」ことだった。

 ――自己理解

 

※【森岡氏】といったふうにこれは自分の意見ではなく、参考文献にのっとって書いているんだということを明記しておく。

 

 

 

1.やりたいこと・得意なこと

 

 

 自分のやりたいことが見つからないという人はけっこう多いはずだ。

「得意を活かす仕事を」と言われても、例えば特技がバスケだとか早食いとかだったら、バスケ選手になったり、フードファイターになったりするのかと言われれば、おそらくそうはならないだろう。

 なぜか? 

 得意なことを挙げたところで、それらはその道を究めたプロからしてみれば塵芥同然のもので、だから結局特技から離れたジャンルの仕事に従事することになる。

 得意の分野が「英語」とか「プログラミングスキル」とか「人を惹きつけるトーク力」とかだったら引く手あまただろうが、そもそもそういった特技を身につけているひとは「自分のやりたいこと」について悩まない。悩む人のほとんどが自分の得意なことに自信を持てなかったり、もしくは得意なことがなかったりする。

 私の場合、履歴書でも何でも特技の欄はテニスとしていたが、いつもそのカタカナ三文字を書くまでに一分くらいの葛藤があった。テニスをする人の中では私はそれほどうまくない部類に属するだろうし……。かといって、他の特技は……と考えると、脳に過るのは「集中力」「ロジカルシンキング」「情報収集」とどれも疑わしいものばかりで、「英語を話すこと」「マラソン」「メンタリズム」などとためらいなく書けたらどれほどよいことだろうかと何度も思った。

 

「じゃあ、やりたいことを仕事にすればいいんじゃないの?」という提言が来る。なるほど、特技がないなら、やりたいことを仕事にする。ユーチューバーも「好きなことだけで、生きていく」と言っているしね。じゃあ、私の場合、「小説を読むこと」とか「YouTubeを見ることかな」……。それがどう仕事にコネクトする? 「小説を読む仕事」なんてないし「YouTube見るだけでお金が稼げる仕事」なんてない。

 じゃあ、「出版業界」とか「映像系の会社」とか視野に入れたらどう? と言われそうだが、それはそれで違うんだよなあと思ってしまう。また、他に「野球観戦」とか「犬をかわいがること」とか私が至福に思えるものはあるが、それを仕事にしようという気持ちにはならないし、それを仕事にするほどの情熱も持ち合わせていない。だから、結局「やりたいことが見つからない」という結論に行き着いてしまう。

 

森岡氏】

 この問題の本質は外にあるのではなく、内側にあるものだ。

 そう、自分自身への理解の乏しさが原因なのだ。

 自分の中に「軸」がないということだ。

 自分の中に基準となる「軸」がなければ、やりたいことが生まれるはずも、選べるはずもない。この「軸」について、「経験がないのに考えても仕方ない」と考えてしまうのは間違えで、このSelf Awarenessは、いつ考えても早すぎることも、遅すぎることもないのだ。

 

【ビル・バーネット氏、デイブ・エヴァンス氏】

 また、やりたいことが見つからなくても大丈夫で、何かを試してみて、それは好きだと気付き、上達したあとで情熱というのは生まれるものなのだ。

 私の場合、本を読むことがこれに該当するように思える。私はもともと本を読むのが大嫌いだった。だが、国語の教師を目指す身として(それまで、本嫌いの国語教師って面白くね? ってノリだった)、さすがに小説をいくつか読んでおいた方がいいかなと思って読み始めたのだ。確か、乙一さんの「夏と花火と私の死体」だったと思う。これは最後まで読み切ったが(とはいえ、表題作に加え、もう一つ別の作品が収録されていたが、それは読まなかった)、同じく乙一さんの「暗いところで待ち合わせ」は謎を理解した瞬間、結末を見ることなく読むのをやめたのだ。そんな怠惰な読者だった私は宮本輝さんの分厚い一冊「青が散る」を読破したことで、純文学の面白さを見出し、また、頓挫することなく読みぬいたという自信も手伝って、小説の世界にどっぷりはまることになった。

 だから、初めは見向きもしなかったものに対して取り組んでいて、退屈だとか思うかもしれないが、次第にそれが「好き」になることがあるわけだ。

 だから、情熱になれる何かを探す前に、自分について知ることが優先される。「人間性」、「考え方」、「行動」とか……。

 

【八木氏】

 やりたいことを見つけたとき、運命的な感覚を味わうとか言われるが、あんなのは滅多になく、やりたいことを見つけても最初は興味レベルなのだ。

 あと、やりたいことを見つけるために行動を起こさなければならないというのも、アレは嘘でまず最初にすべきは「自己理解」だ。

 やりたいことは常に自分の中にある。そして、実現手段は社会の中にある。それらを取り違えないようにしないといけない。

 やりたいことがわからないのは選択肢が多いのが原因で、まず選択肢を絞るために自分について深く追究すべきだ。

 

(だが、私の場合は、逆に選択肢が少なすぎたようだ。なぜか? 私は趣味を持っていなさ過ぎたのだ。村上龍は無趣味をすすめているが、やはり趣味は多い方がいいし、それが雑談のテーマになり得る。

 そういうわけで、私は美術館巡りをしたいなと漠然と思っていたり、カメラを買って夏の風景を撮りに行きたいなと思っていたりしている。高校生のときはボカロにはまっていたので、PVを制作したいがためにその練習にと動画編集ソフトで動画をつくったり、MIDIについての知識をつけようとしていた。今思い返せば、何て無駄なことをしていたんだと嘆きたくなる。動画編集についてはまあいい、MIDIを覚えたところで、ちゃちいボカロしかつくれまい。当時私が目指していたのは、それなりに質のいいボカロ曲で、それを無料で作曲しようと志していたのだ。バカだ。ほんとに。そんな時間があれば、もっと有効的な時間の使い方があっただろう。例えば、就職について考えたり、化学が苦手なので興味関心を持つようになるとか、英語を極めるとか……。学生時代、浪費した時間は返ってこない。実に嘆かわしい過去。

 ……とこれから私が生きるのは未来なのだから、過去に文句言ったところで意味がない。)

 

2.自分を知ること

 

 

【高橋氏】

 自分を知ること。

 心のブラックボックスを解読すること。

 著者は「快―苦」「暴流―衰退」という2つの軸によって、心のブラックボックスを読み解くことができると述べている。ものごとに対し快楽的に思う傾向を「快」、ものごとを悲観的に思う傾向を「苦」、心のエネルギーの出そうとするのを「暴流」、心のエネルギーを抑制しようとするのを「衰退」としている。

 

①快・暴流タイプ ― 飽くなき挑戦家 or 独りよがりの自信家

 歪曲→独尊→孤立 優位→支配/差別→枯渇/反感 欲得→貪り→無理

②苦・暴流タイプ ― 勇気ある正義漢 or 恨みの強い被害者

 拒絶→頑固→硬直 批判→正論→対立/萎縮 不満→荒れ→破壊

③苦・衰退タイプ ― ひたむきな求道者 or あきらめに縛られた卑下者

 恐怖→逃避→衰弱 否定→鈍重→沈鬱 卑屈→愚痴→虚無

④快・衰退タイプ ― 心優しい癒し手 or 自己満足の幸せ者

 満足→怠惰→停滞 鈍感→曖昧→混乱 依存→契約→癒着

 

 上に書いた「歪曲→独尊→孤立」といったものは「回路」である。「快・暴流タイプ」はいわゆる独善者なので、「物事を捻じ曲げて考えるようになり」、「自分が偉いと思うようになり」、「孤立してしまう」といった回路の流れがあるというわけだ。

 ちょうど著書には、教育者として人生の仕事を果たしたいと願った若者がそれぞれ4つのタイプのいずれかだったらどうなるかといった例えが載っていた。

 

①快・暴流タイプなら… 生徒に対し上から目線で指示をする鼻持ちならない教育者 orエネルギッシュに夢や願いを抱くすばらしさを生徒たちに説く教育者

 

②苦・暴流タイプなら… 揺らぐことのない信念に基づく批判精神によって、社会的な問題に一途に取り組み、生徒たちの問題意識や時代意識を高める教育者

 

③苦・衰退タイプなら… 人間の弱さに対する深い共感を湛えながら、生徒たちの悩みに寄り添え、愚直にテーマを探求することの大切さを身をもって伝える教育者

 

④快・衰退タイプなら… 心を開いて生徒たちを受け入れ、大きな励ましと癒しを与え、目的に向かっていっしょに歩んでいく教育者

 

 あくまで可能性の話だ。

 しかし、この可能性は人間だれしも秘めているものだというのだ。

 

 私はゴリゴリの「苦・衰退タイプ」(診断結果からしてそうだった)

 偽我(最初の自分)は「卑屈→愚痴→虚無」の「回路」だったが、私の育むべき善我(最終形態の自分)は「素直→懸命」の「回路」だった。(リフレーミングだね)

 「苦・衰退タイプ」には誠実、回帰、まじめさ、ひたむきさ、無垢、赤心、献身、陰徳、愚直、共感、慈悲、托身といった光が輝いているそうだ。 (何だか著書はやたらと仏教じみたにおいがする)

 

 これは人によってタイプが異なるので、詳しくは本書を読んでいただきたい。

 今回、私は「苦・衰退タイプ」の「卑屈→愚痴→虚無」の「回路」であったので、その脱し方だけここに記そうと思う。

 私のようなタイプは「優劣」にこだわり、それが「劣等感」として現れやすいそうだ。

「どうせ私は」とか思いながら、いつの間にか「あの人よりまし」と相手をこき下ろすことで、自分を保とうとしている厄介な回路だそうだ。

 私だ、これ。

 こんな回路を抱くひとはものごとを素直に受信することが大切だそうだ。まっすぐものごとを正対する姿勢こそが必要となってくる。

 

「人事を尽くして天命を待つ」

 

 その言葉が示す通り、懸命に現実に応えていく。そうすることで、卑屈を素直に、愚痴を懸命に転換できる。善我の誕生だ。

 あと、「苦・衰退タイプ」は「案じる力」を持っているので、それを活かし、「この点はどうだろうか?」とか「これでは足りないのではないか」とか「もっといい改善方法があるのではないか」と、あれこれ考えられる、これは長所であるそうだ。これまたリフレーミングだが、「心配性」が実は「案じる力」に結び付き、計画的に物事に取り掛かれるのだ。

 以上に挙げたことから、自分の「長所」を明らかにすることができそうだ。また、同時に「短所」も明らかになり今後どうしていくべきか考える余地はある。

 

3.自分の強みを知ること

 

 

森岡氏】

 次は自分の強みの見つけ方だ。

 一度、さっきの「自分を知る力」についてのことは忘れることにする。

 それとは別に、今回は「社会との関わりで気持ち良かった文脈」を考える。

 まず、最低50個好きな行動を動詞で書き出してみる。

 ちなみに私の場合、50個もなかった。

 

(学ぶ 考える 思考を整理する 予測する 仮説を立てる 文学を研究する 寝る テニスする 計画を立てる 本を読む 探す 文章を書く 笑う 未来を考える スマホを弄る 一人旅をする(遠出はしたことない) たまにぼうっとする 教える 友達と話す 飲む……)

 

 さて、次に書き出した動詞の集約と仕分けをする。

 Tの人(Thinking)、Cの人(Communication)、Lの人(Leadership)の3分類(これは、どの職能においても重要なコンピテンシー)をもとに、分けていく。

 

①Tの人:考える力/戦略性が強みになる

・典型的な動詞:考えるのが好き 問題を解くのが好き 人と議論するのが好き 勝つための作戦を考えるのが好き 勉強をするのが好き 興味ある領域を研究するのが好き……など)

 言わずもがな、私はこれです。

・典型的な趣味:知的好奇心が満たされるものが趣味になっている

(戦略系ゲーム、将棋、チェス、囲碁、読書、プログラミング)

・典型的な傾向:暇になると無意識に課題を設定して頭を使って遊んでいる

・向いている職種:ファイナンスコンサルタント、研究職、各種の士業、アナリスト、マーケティング、企画系

 

②Cの人:伝える力/人と繋がる力が強みになる

・典型的な動詞:友達や知り合いが増えることが好き 人と会うのが好き 人と話すのが好き 話を聴くのが好き SNSと多くの人と繋がるのが好き……など

 私とは真逆のタイプだが、私はこのタイプでありたかったと思っている。

・典型的な趣味:人脈作りが趣味のようなものだ

SNS、パーティー、ゴルフ、旅行、イベント、ファッション、グルメ情報)

・典型的な傾向:コミュニケーション能力が高く、社交性も高い

・向いている職種:プロデューサー業、営業職、PR/後方、交渉人、広告代理店、ジャーナリスト、政治家

 

③Lの人:変化を起こす力/人を動かす力が強みになる

・典型的な動詞:何かを達成することが好き 高い目的を定めて挑戦することが好き 仕切ることが好き 大きな変化を起こすことが好き……など

 私とは真逆なタイプ……変化を嫌う人間だしね。でも、やっぱりこちらにも憧れる。

・典型的な趣味:達成感を味わうことが生きがいで、趣味はその嗜好に反映したもの

(ランニング、ジム、トライアスロン、ストイックなもの)

・典型的な傾向:とにかく挑戦すること、達成することが好き

・向いている職種:プロデューサー、研究開発リーダー、管理職、経営者

 

 よくちまたでは「仕事をするのはお金を稼ぐため」と考え、面接などでは内心「志望動機とかねえ」など思っている人に溢れている。そして、面接系の動画をYouTubeで見ていると、コメント欄にはそういった類の愚痴コメントが大量にある。「嘘つき大会」とか「くだらない」とか。私もそんなふうに思っていた一員なので、真っ向から批判はできない。だが、思うに、じゃあ企業側は何を基準に人材を獲得しようというのか。面接でなければ、筆記オンリーか? 筆記はよくても、実はまったく仕事もできない人でした! だったらどうする? 面接があれば、そういった人を篩にかけられるのではないか? じゃあ、逆に面接官側に立って、あなたは面接で「ボソボソしゃべっている元気のない人」を採りたいだろうか? 「特技はありません。大学四年間サークルにもはいらず、マクドで何のモチベーションもなく働いていました」とかいう人を採りたいだろうか? 

 とにかく、就活が忌避されるのは判るが、だからといって「嘘つき大会」だとか「くだらない」とか、斜に構えたこと言っていたところで、あなたは仕事を手に入れることはできない。そんなに就活が嫌なら、起業をしろ、ユーチューバーでもやれ、公務員にでもなれ(面接はあるが)、劇団員になれ、芸人になれ。就活に疑義を呈したくなるのは判る。だが、就活で頑張るやつらを「嘘つき」だとか「サークルで遊び惚けていた奴ら」だとか言って僻むのはマジにかっこわるい。朝井リョウの「何者」を読め、マジに。マジ読んだ方がいい。

 

 ……と、私はいったい誰に対してこんなことを言っているんだ?

 のんべんだらりと生きていた高校時代の私か。

 

 ちょっと熱に浮かされたように変なことを書いてしまった。

 そろそろ戻ろう。

 

 就職するにあたり、まず自分を理解することから始める。

 そして、自分の特徴を把握したならば、それを活かせるたくさんの正解から1つの職能を選び、その職能を積める戦場へ進むのだ。就職するなら身につけたい職能で配属してくれる会社をできるだけ選ぶべきだ。

 で、一番避けるべきは「自分にどんな職能が身につくのか想像できない会社」だ。

 

 以上のことから、「身につけたい職能」を明らかにすることも大切だと判る。

 やりたいことがないとか得意なことがないとか嘆いているなら、自分が今身につけたいスキルを考えるべきだ。

 今自分の中にないなら、そこに何か満たしたいと思えばいい。

 それを考えたほうが「ないものを嘆く」より全然いいだろう。

 

4.得意×好き

 

 

【八木氏】

 Q.あなたのなりたいものは何ですか?

 そう尋ねてはいけない。

 なぜか?

 「なりたいもの」と「やりたいこと」は違うからだ。

 これはうちの進路の先生も言っているのだが、「何をやっているときが一番楽しいか?」ということを考えてから、仕事は決めなければならないのだ。

 その「やりたいこと」の公式を八木氏は提唱している。

 

 それは、

 

 得意なこと×好きなこと

 

 だ。

 

 実は仕事は今持っている「スキル・知識」よりも「得意なこと」を活かす方が大事なのだ。

 例えば、「得意なこと」が「自然よりも上手くできていて苦なく、心地よいと感じるもの」であり、「リスクを考えられるもの」、「人のきもちを大事にするもの」、「一つのことを突き詰めるもの」で、何より「後で身につけられないもの」なのだ。

 対して、「スキル・知識」は英語、プログラミング、Web知識などで、詳しいかもしれないが、「後で身につけられるもの」であり、「特定の仕事」においてしか用いられない場合がある。「得意なこと」は今まで生きてきた中で時間をかけて醸成してきたものが、急ごしらえともいえよう「知識・スキル」に勝るなど笑止! というわけだ。

 

 また、「好きなこと」と「得意なこと」を掛け合わせる必要があるのはなぜか。

例えば「好きなこと」だけで考えると、私の場合、「教えること」であり、だから「教師」を選択したわけであるが、よくよく考えるとこれはおかしな話である。

「教える」のが好きならば、塾の講師でもいいし、YouTubeで教育系の動画を投稿すればいいし、教育産業に携わる仕事をすればいい。

「子どもが好き」とか「学校が好き」とか「部活が好き」とかいった理由があって、初めてイコール「教師になりたい」という思いに変わる。

 

 さて、ここで整理をする。

 自分の得意なことは何だろうか?

 自分の好きなことは何だろうか?

 以上の得意と好きを掛け合わせてみよう。

 その条件に合う仕事とはいったい何だろう?

 

・得意なことの見つけ方

 

 得意を伸ばすべきと八木氏は言う。

 ぶっちゃけ短所を埋めたところで、それは平凡にしかならないのだから、そんな時間があれば、長所をますます伸ばせていけばいいのだ。

 さて、長所とか得意なことって何だろう?

 それは以下の質問に答えることで見つけられそうだ。

Q1.これまでの人生で充実していた体験は?

Q2.最近イラっとした、もしくは心がざわざわしたのは?(イラっとしたなら、それは自分が当たり前にこなしてるもの、つまり得意なものだったりするのだ)

Q3.中のいい人に「自分の長所って何?」と尋ねる。

Q4.明日仕事をやめたとして、もっとやりたかったと感じるのは?(嫌だと思っている仕事の中にも「楽しい」と思える部分はあるはず。それを拾い上げるのだ。)

Q5.これまでの人生の成果とは?(いわば成功体験だ)

 

・好きなことの見つけ方

 

 好きなこととは、興味・好奇心を感じる分野のことだ。

 さっそく、それを見つけるための質問を紹介する。

Q1.今お金を払ってでも勉強したいことはある?

Q2.本棚にはどんなジャンルの本があるか?(興味関心の扉)

Q3.これに出会えてよかった、救われたと思える分野はあるか?

Q4.これまで生きてきた中でお礼を言いたい仕事はあるか?

Q5.これまでの人生で世の中に対する怒りを感じたことはあるか?(現状に対する不満で、現状を物足りないと思うから怒りが生まれる。この怒りを感じる分野を少しでもよくしていくために働くこともできそうだ)

 

 実は著書にはまだまだ質問がある。それに関してはここでは紹介しないが、数多くの質問に答えることで自分が見えてきそうである。

 

5.仕事観×人生観

 

 

【ビル・バーネット氏、デイブ・エヴァンス氏】

 ぶれない自分になるために。

 今度は「仕事観」と「人生観」を明らかにする。

 

 まず、仕事観。

・仕事は何のためにある?

・なぜあなたは仕事をするのか?

・よい仕事とはなにか?

 

 次に人生観。

・人生に意味を与えるものとは?

・人生に生きがいや価値観を与えるものとは?

・あなたの人生は、家族、地域社会、世界とどう関係しているのか?

・お金、名声、目標達成は満足できる人生とどうかかわっているか?

・経験、知識、充足感はあなたの人生にとってどれくらい重要か?

 

 では「仕事観」×「人生観」をしてみよう。

 補い合っているか?

 食い違っているか?

 因果関係はあるか?

 見てみよう。

 ぶれない一点を目指すためには、やはり「仕事観」と「人生観」を一致させることが大切だ。どうだったろうか?

 

6.自分の価値観について

 

 

【八木氏】

 価値観を中心に仕事をつくると、モチベーションが途切れない。

 価値観というのは方向であり、目標というのは距離である。

 つまり、価値観は進み続ける人生の方向で、目標はその途中にあるチェックポイントである。

 

・価値観について

 

 価値観とは「~したい」という思いのことで、決して「~すべき」ということではない。「~したい」は「自分」が確かに思っていることで、「~すべき」は「他人」や「社会」に押しつけられた偽の価値観だ。

 価値観キーワードというものを八木氏は挙げている。それを見つけるための質問が以下だ。

Q1.尊敬する人は誰か?(自分の価値観を反映)※わりと身近な人の方がいいかも。

Q2.今まで自分に一番大きな影響を与えている出来事or経験とは何か?(自分の価値観と結びついた経験は強烈な記憶を伴っているものだ)

Q3.今の社会には何が足りないか?(自分の価値観のみならず、仕事の目的を明らかにする)

Q4.自分って人生で何を大事にしてそうか?(他人に聞く)

Q5.誰かにアドバイスをするとして、「一番伝えたい行動」「一番伝えたくない行動」とは何か? ※例えば、「伝えたい行動」が「興味ある仕事を見つけよう」なら、それは自分の価値観だ。対し、「そのチャレンジは危ないからやめておけ」なら、それは自分の価値観とは真逆のものだ。つまり、そのことから自分の価値観は「現状維持」の真逆、「成長」とか「挑戦」といったキーワードが浮かび上がる。

 

 あとは、上の質問で獲得した価値観キーワードをKJ法によってマインドマップしたり、その価値観の中で土台となるものを決めて、上に向かって最終的に目的とするものを置くといったふうにピラミッド型にランキング形式に図式化したり、その価値観ランキングの中から仕事の目的を決めたりする。(詳しくは本書にて)

 まあでも、価値観キーワードを見つけ出した時点で、料理の材料を買ったようなものだと思う。その調理の仕方は各人次第かなと思っている。

 

・目標について

 

 アリストテレスは言った。

 

「人間は、目標を追い求める生き物だ。目標に向かい努力することによってのみ、人生が意味あるものとなる。」

 

 どんな仕事でも「目標設定」をしなければいけない。

 そうしないと仕事のモチベーションが上がらなくなってしまう、高邁できなくなってしまう。

 だから、目標の持てない仕事はやめとけって話。

 

7.仕事観について

 

 

【ビル・バーネット氏、デイブ・エヴァンス氏】

 仕事はつまんなくて当たり前? 

 そんなわけない。

 楽しさは自分に合った仕事を見つける大事な指針だ。

・目の前の活動に完全に没入している。

・恍惚感、高揚感を覚える。

・心に迷いなく、何をどうすべきか理解している。

・完全に心が落ち着いている。

・時間が止まっている消失感。

 以上の5つはいわゆる「フロー状態」というもので、仕事でこの状態に達する人は少ないかと思う。

 だが、人は何かしらこういった「フロー状態」になる瞬間がありそうだ。

 今の私がそうだ。ブログ書くとき、一万字超えようが別に苦痛に感じない。

・あなたが熱中しているタイミング

・エネルギーに満ち溢れているタイミング

 それは過去の体験がヒントになるかもしれない。

 それでも見つからないようなら「AEIOUメソッド」を用いよう。

 

 AEIOUメソッドとは。

・活動(Activity)

 あなたは何をしていたか? それは決まった形式を持つ活動か? それとも自由気ままな活動か? あなたは特別な役割(リーダーなど)を果たしていたか? それとも一参加者に過ぎなかったか?

・環境(Environment)

 その活動をしていた場所はどこか? その場所はあなたをどんな気分にさせたか?

・やりとり(Interaction)

 やりとりした相手は人間? だとしたら、誰? どんな人? もしかして機械? 新しいタイプのやりとり? おなじみのやり取り?

・もの(Object)

 ものやデバイスiPadスマホ、ホッケー・スティックなど)は使ったか? そのときのあなたの気分を生み出したものは?

・ひと(User)

 ほかにその場にいたひとは? そのひととあなたの体験にとってプラス? マイナス?

 

(例)

 教師なら、学校(環境)で難しい問題(もの)を同級生(ひと)に教えたところ(活動)、「判りやすいね」(やりとり)と言ってくれて、それ以来、教師になりたいと思った。

 

 考えてみよう。

 きっと仕事に対する価値観を見つけられるはずだ。

 

 あとはそうだな……やぱっぱりマインドマップ

 アウトドアが好きなら「アウトドア」→「キャンプ」→「料理」とか「アウトドア」→「ハイキング」→「山」→「探検家」とか「アウトドア」→「サーフィン」→「ビーチ」とか、とにかく変なことでもしょうもないことでもいいので書き出してみる、そうすることで今まで見えなかったことも見えてくるだろう。

 

8.自己分析

 

 

【前田氏】

 これからは個の時代になってくる。

 そのためにはやはり「自分」を持っている方が断然良い。

 つまり「熱狂的になれるもの」を持っておいた方がいい。前田氏はこれを「オタク」と形容しているが、別に悪口ではないだろう。もちろん、アニメとか漫画のオタクは社会と結びつきは希薄のように思えるが、「プログラミング」オタクとか「教育」オタクとか、そういったある業界で通用しそうなオタクは強い。

 ということで、そういった内なるオタクの存在に実は私たちは気付いていないのかもしれない。だから、自己分析をすべきだ。前田氏は言う。因みに前田氏は「自己分析ノート」を30冊も書いたそうだ。(よく人は天才に憧れる。だから、勘違いした凡才の人間が天才を参考に、勉強もせずに面接練習もせずに本番を迎えたりするが、あれはただの馬鹿で、天才と呼ばれるごく一部を除いて、成功者のほとんどがもともと凡才だったが努力を積み重ねて成功を収めるに至ったのだ。)

 徹底的に自己分析をすれば、たとえ「好きな色は何ですか?」みたいなイレギュラーな質問が来てもうまく対応できそうだ。

 また、自分がよく判らなければ、とにかく行動を起こせばいい。読書や一人旅、映画を見るなどで、見えなかった自分が見えてくることもあるのだ。

 

 また、前田氏は「抽象化」「具体化」を重要にしている。

 例えば、「あなたの強みは何ですか?」と尋ねられて、「辛抱強い」で終わるようならそれは弱い。そこからさらに具体化を行ったり、それらに対して「なぜ?」と問い、今度は抽象化してみる。そういった「抽象→具体」「具体→抽象」が必須となる。

 「なぜ辛抱強いのか?」を考え、「何が自分をそこまで辛抱強くさせているのだろう?」と考え、「自分の辛抱強さを形作った原体験は何だろう?」と考える。こうやって広がりを持たせることで、面接でいざ「長所は何か?」と尋ねられても、ある程度広やかな内容で答えることができる。

 また、少々面倒かもしれないが、今度は一つの質問に対して「ファクト」「抽象化」「転用」の3点セットを用意することも大事だそうだ。

 例は、「高校時代に描いていた夢は?」だとして、前田氏は「ファクト」を「国連などの国際機関に入ること」、「抽象化」を「世界の不条理と闘いたい、という強い思いがあった」、「転用」を「民間の力、インターネットの力で世界の不条理を解決していこう」といったふうに、ひとつの質問に対してさらなる広がりを見せている。前田氏はこの「転用」が大事だと言っている。この「転用」は行動を起こるためのトリガーでもあり、指針でもある。この「転用」を明らかにすることで、人生のプランを具体的に描くことができる。

 

【ビル・バーネット氏、デイブ・エヴァンス氏】

 先ほど、人生のプランを具体的に描くと書いた。

ここで、「人生のプロトタイプ」をつくることは大切だよってことを述べる。

 人生のプランと言われても、なかなか見えない。

 それはなぜか?

 さっきも述べたが、「転用」がないからだ。自己を理解したところで止まっているのだ。自己を理解したなら、それから何ができるのかを考えなければならない。

 ライフデザイン。

 本書には具体的なやり方が書かれてあったが、ここでは紹介しない(というか、私にはあまりしっくりと来なかった)。

 シンプルでいいと思う。

 自分の「好きなこと」や「得意なこと」を掛け合わせて、そこから何ができるかを考える。それは若いうちにやっておいた方がいいのか、と順序などを考えたり、何歳まで何をしておきたいとか、これからの時代を生き抜くためにどんなスキルを手に入れておきたいかなどを深く考え、簡単に人生のプランを立ててみる。

 まあ、その前にみんな大好きブレーンストーミングで、しっかり「自分」を浮き彫りにしようか。

 

9.面接で緊張しないために

 

 

 ここまでのことをいろいろ考えて、言語化してみよう。

 そしたら、どうなるか?

 言葉が自分を構築していく感じがするだろうか。

 もしそうだとしたら、それは自分を「言葉」で語ることができるようになったということにつながるのではないか。

 よく面接になってロボットじみた声で話す人がいるが、それは「言葉」を持っていないからではないか? じゃあ、「言葉」を持とう。「言葉」を持てば、きっとスムーズに話せるはずだ。

 

森岡氏】

 伝え方よりも「中身」の方が大事(How<What)。

 伝え方が9割と言われるが、実は「内容が10割」だそうだ。

 なるほど、口八丁でも中身のない人間は採用されないというわけだ。ほんとか? まあ、その真偽は置いておいて、「伝え方」よりも「中身」だと断言してくれたのなら、それは喜ばしいことだ。口八丁に勝るとしたら、それは実に道理に合ったことだ。

 森岡氏は「自分をブランド化せよ」と言っている。

 上手に話そうとはせずに、ただ内容だけに意識を置いて、「My Brand」を語るわけだ。

 マーケティングの手法で、ブランド化の設計図をつくれと森岡氏は提言している。

 私はビジネスに疎いので、マーケティングについてはよく知らない。

 だから、一応紹介するが、深くは理解できていないことをご容赦いただきたい。

①WHO:「誰に」買ってもらうのか?

 もちろんこれは面接官がターゲットなので、面接官向けに物事を話す。

②WHAT:「何を」買ってもらうのか?

 これは価値だ。自分の商品価値を売り出すわけだ。ここが曖昧だとコアターゲットの面接官を射止めることはできない。

③HOW:「どうやって」買ってもらうのか?

 戦略を具体的に実行するためにプランだ。これは前に述べた「転用」とかかわりが深いと思う。自分の商品価値をどう生かすのか、どうやって御社に貢献するのか!

 

 まあ、ようは自分を熟知しておけよってことかもしれない。

 あとは何度も何度も面接練習を繰り返すことが要されるだろう。

 緊張とはそもそも脳が「現状維持」を好み過ぎるという性質がそうさせているのだ。だから、日常の中に「面接練習」を組み入れることで、面接を「現状」に変えていくのだ。

 

10.適職を探す(おまけ)

 

 

※この章はおまけみたいなものです。

 

【鈴木氏】

 鈴木氏は「好きを仕事に」「伸びる業界から選ぶ」「楽かどうか」「お金を稼げるか」こういった志望動機ではだめだと言っている。「好きを仕事に」ってダメなの? って思うかもしれないが、ここでは無視させてほしい。

 さて、ここで述べるのは「適職探し」だ。

 鈴木氏は7つの徳目を紹介し、その7つからマトリックス分析を行って、適職を探すのだと言っている。

 

・7つの徳目

裁量権はあるか(自由)

 作業内容はある程度自分の思う通りにやれるかどうか?

 場所は好きな所でできるか? 時間はどうだろうか?

②進歩している感覚はあるか(達成)

 何か前に進んでいる感じがあるか? 仕事に達成感を持てるか?

③攻撃型 or 防御型タイプは合っているか(焦点)

 攻撃型:最高の状態を想定してリスクを覚悟しスピードを重視する

コンサルタント・アーティスト・クリエイター・テクノロジー系)

 防御型:最悪の状態を想定してそのリスクを避ける

経理・弁護士・データアナリスト)

④内容と報酬は明確か(明確)

 何をやって、何をすれば、いくら報酬をもらえるか。

 そういったことが明確になっているかどうか?

⑤業務内容はバラエティの富んでいるか(多様)

 それだけをやれっといったふうになっていないか?

 マルチタスクはよくないように思われがちだが、「それだけ」というのはつらいものだ。

⑥自分と似た人が多いか(仲間)

 今ではインターネットで企業などを検索できるため、どういう人が働いているか判りそうだ。私の場合、今の職場に同い年がいないので、友だちと呼べる人はいない。だから、学校内では生徒相手以外にはほとんど敬語だ。

⑦他人の生活に影響を与えるか

 その仕事が誰かを支えているという感じがするか?

 

マトリックス分析

 以上の7徳目から、企業を採点する。

 ①~⑦のうち、どれを重視したいか、3点満点でまず決めてみる。それが終われば、今度は5点満点で、選択肢にある企業を採点する。この企業は①は5点だけど、②は2点だなといった感じで。

 で、最後に「重視したいもの×企業の採点=合計」で表してみる。

 さて、どこの企業の合計が高かっただろうか?

 

11.最後に

 

 

 たくさんの成功者が世の中にいる。

 だけど、彼らを参考に、成功体験をなぞるのは愚かなことで、成功の法則はひとによって異なるものだし、何をもって成功と感じるのもひとによって違う。

 だが、成功を感じるとき、それは「自分らしく生きられるとき」ではないだろうか。

 だから、自分らしいとは何かを知っておく必要があるのだ。

 自己理解のために過去の自分に腹が立ったところで意味がない。自分の過去が失敗だったというなら、その失敗を材料に成功の道を敷いて行けばいいのだ。

 自己分析ができていなければ、きっと人生の選択肢が多すぎてどこに進めばいいのか判らなくなってしまうだろう。

「ジャム実験」と呼ばれるものがあり、24種類のジャムと6種類のジャムがあり、購買者が多かったのは後者のほうだった。

 何が言いたいかというと、選択肢は多すぎると困るものだということだ。

 選択肢を有力候補へと絞っていき、その中で選ぶ必要がある。しつこいようだが、そのためには自己理解が不可欠だ。

 正しく自己理解できていない場合、自分は泳げないのに海に飛び込むようなことをしてしまうかもしれないのだ。もしくは荒治療だと泳げるまで必死に練習するかもしれないが、そんなことをしている間に同じく海に飛び込んだ人たちはとうの先のほうへ泳いで行っているのだ。短所の埋め合わせなんてせずに、自分の長所を活かせていけばいい。

 

 自分とは誰か?

 自分って何だ?

 

 疑問に溢れて、佇立している暇があれば、さっさと自己分析をせよというわけだ。

 

 知らない自分に出会うチャンスかもしれない。