Books

外山美樹『勉強する気はなぜ起こらないのか』

ルンバを見て、「やる気ある」と思うひとはいないだろう。 もし、いれば、そいつはそうとうな変わり者だな。 なぜ、ルンバを見て「やる気ある」と思わないのか。 それはルンバが電力という外部からの力を得ているからである。 人間は電力などでエネルギーを…

SDGsとは何か?

SDGsとは、未来の世界のかたちだ SDGsは「持続可能な開発目標」と訳されることが多いが、「持続可能な成長目標」としたほうがわかりやすいそうだ。 今だけ成長して未来に経済的・社会的・環境的な負債を残すのではなく、持続的に成長していく。しかも、経済…

重松清『十字架』―罪の十字架を一生背負っていく。

重松清『十字架』 なかなか重い小説だった。 もちろん物理的ではなく、空気が重いのだ。 あらすじを書き記す。 以前からクラス内でいじめを受けていた中学生、藤井俊介(以下、フジシュン)は、ある日、遺書を残して自宅の庭の木で首を吊って死んだ。遺書に…

Z世代は親友のいらない未来を夢見るか?

Z世代という名前は、原田曜平『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』という著書を見て、初めて知った。 なぜ、「Z」なのかというと、上記の著書いわく、「アメリカでは彼らより上の世代が「ジェネレーションX」(諸説あるが1960年代初頭または…

自尊感情の低い子どもたちに声掛けを

世の中には生きづらさを感じているひとが多くいる。 老若男女問わずそういうひとはいると思うが、私は今回「子ども」に絞って書いていく。 自尊感情の低い子ども。 そもそも、なぜ子どもたちは自尊感情が低いのか? 古荘純一『日本の子どもの自尊感情はなぜ…

あえて空気を読まない、そして、援助希求力 ――諸富祥彦『教師の資質』『いい教師の条件』

いま、Twitter上で「#教師のバトン」なるものが賑わいを見せている。 確かに勤務校の担任や校務分掌の長を見ていると、その大変さに恐ろしさを感じることもある。もはや、教師の本分である授業は二の次どころか三、四の次くらいである。 私の勤務校では、生…

坂口恭平『苦しい時は電話して』

苦しい時は電話して あ、別に病んでないです。 ただ、気になって手に取っただけ。 たとえば、心が病んでいるひと、自傷しようとしているひと、自殺を考えているひとにどんな支援ができるだろうか? とか、そもそもどういったことを考えているのか? とか、そ…

土井隆義『友だち地獄』

『友だち地獄』 ちょっと前に紹介した『友だち幻想』よりドロドロとした嫌なリアルが書かれている。 1.いじめを生み出す「優しい関係」 2.リストカット少女の「痛み」の系譜 3.ひきこもりとケータイ小説のあいだ 4.ケータイによる自己ナビゲーション 5.ネッ…

吉本ばなな『TSUGUMI』

つぐみ。 意地悪で粗野で口が悪く、わがままで甘ったれでずる賢いつぐみ。 彼女は病弱である。 病弱なキャラクターとは思えないほど、つぐみは自由気ままだし天真爛漫である。 だから、つぐみが病弱であるということを忘れてしまいそうになる。 最後まで読ん…

優越感はいらない―『おとなになるのび太たちへ』

私はのび太が嫌いだ。 馬鹿で、のろまで、どんくさくて、泣き虫で、すぐにドラえもんに頼って…… 私はのび太が嫌いだった。 私が眼鏡があまり好きではないのも、襟つきの服を着たがらないのも、実は野比のび太が嫌いだからだ。 昔から、嫌いだった。 嫌い、嫌…

平田オリザ『わかりあえないことから』

コミュニケ―ションについて書かれた新書。 コミュニケーション教育が求められている昨今、どこに言ってもコミュニケーションは必要だと叫ばれる昨今、面接で勝ち上がるためにコミュニケーション能力はこれ以上ないほど重要だといわれる昨今。 昔は寡黙なひと…

榎本博明『教育現場は困ってる 薄っぺらな大人をつくる実学志向』

最近、いろんな教育系の新書を読んでいるのだが、筆者が小学校・中学校・高校教師というひとはいまだ見たことがない。だいたいが、大学の教授である。そのため、大学の授業をベースに教育が語られることが多い(内田樹氏とか完全にそうだ)。 だから、授業の…

森博嗣『勉強の価値』

今の自分のトレンド。 勉強に実利を求めるべきか、求めざるべきか、という問題についていろいろ考えている。 たとえば、古典をなぜ学ぶのか? という問題について。 実利という面では、学ぶ意義は見いだせない。 だが、国語教育という面から語ると必要不可欠…

内田樹『街場の教育論』

はい、前置きなしにいきなりはじめます。 第一講 教育論の落とし穴 第二講 教育はビジネスではない。 第三講 キャンパスとメンター 第四講 「学位工場」とアレクディテーション 第五講 コミュニケーションの教育 第六講 葛藤させる人 第7講 踊れ、踊り続け…

藤岡陽子『いつまでも白い羽根』

「ネタバレ」があるので、ご注意を。 乃木坂の与田ちゃんのカバーにつられてかった作品。 内容が内容なだけに(看護学生の話)読むことはないだろうと思いながら、一年半くらい積読状態になっていたが、三週間前に読み始め、そこからは一気呵成。 あらすじ …

菅野仁『友だち幻想』

友だちのつくり方が判らない。 ほんとうに判らない。 判らなかった、ではなく、判らない。 今も判らない。 私はあまり友だちがいない。 小学校、中学校はけっこう友だちがいた。部活、クラス関係なく。 しかし、高校生になって、部活以外での友だちはあまり…

現実と虚構の間を揺れ動く

最近流行りの『鬼滅の刃』『チェンソーマン』。 ああいった作品の共通点は「人vs.人ならざる者」という構図があるということだ。 (今、私がこうやって文章を書いているのは、ちょうど『ブレードランナー2049』を見終えた直後のこと。) 面白いストーリーの…

平田オリザ『22世紀を見る君たちへ これからを生きるための「練習問題」』

本書『22世紀を見る君たちへ』は、そのタイトルに惹かれたのだが、内容のほとんどが「大学入試」についてだった。 うーん、思った内容とはちょっと違っていたが、収穫もあった。 1.生徒の本質をつかむ試験 2.対話的な学びとは 3.最後に 1.生徒の本質をつかむ…

阿部共実『月曜日の友達』

月曜日の友達 これはもはや文学だ。 『月曜日の友達』 私は、あまり漫画を読まない。 昔はけっこう読んでいたが、最近はまったくだ。 こんなことを言っては何だが、バトル系の漫画はまず読まない。 面白いと感じないわけではない。実際、『鬼滅の刃』を読ん…

内田樹『下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち』

子どもたちが勉強をしなくなっている。 一概にそう言ってしまうのはよくないかもしれない。 勉強をする子どもたちもいるし、勉強をしない子どもたちもいる。 PISA(学習到達度調査)のデータを参照する。 PISAとはOECD(経済協力開発機構)加盟国を中心とし…

宇佐見りん『推し、燃ゆ』

小説は相変わらず読み続けている。 基本的には読んで、「ハイ終わり!」、で、自分の中に残るものを感じて、若干の余韻を楽しみ、次の本を選ぶ。(小説なぞ、そういうものではあるまいか。だから、最近、授業で小説をチャート化して教えることが苦痛に感じる…

池上彰『なんのために学ぶのか』

高校までの教育と、大学の教育の違いとは何か。 学習者のことを、小学生は「児童」、中・高校は「生徒」、大学に入ると「学生」と呼ぶ。 小・中・高の教育は文部科学省が定めた学習指導要領に基づいて行われる。 教科書は出版する教科書会社は異なれど、どれ…

宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』

なぜ非行に走ってしまうのか? 私たちの常識では考えられない行動を起こす非行少年。 彼ら、彼女らはどうして非行に走ってしまうのか? いまや漫画化されている本書だが、遅ればせながら読ませていただいた。 で、読み終わったのでいろいろ書いていこうと思…

スーザン・ケイン『内向型人間のすごい力』

私は内向型人間だ。 これは間違いない。 あまり友人は多くない。 休日出かけることも少ないし、自分から誰か誘うってことも少ない。 そんな自分に嫌気が差すことがよくあるのだが、その理由は社会が外向型人間向けにつくられているからだろう。 だから、内向…

D・カーネギー『話し方入門』

私は話すのが苦手である。 なぜみんな滔々と言葉を話すことができるのか不思議だ。 私は誰かと会話し終えたら、こう言っておけばよかったとか、あれは言わなくてよかったな、とか一人反省会をする。なんであんなことを言ったんだろう? と後悔することがしば…

「自分とは何か」をめぐる哲学

自分とは何だろうか? ジャルジャルが好きなんで、【JARUJARUTOWER】のネタのタネから動画をもってきた。 以下の動画だ。 おじさん(後藤さん)は「高校生ぐらいのときは、私、二、三(の顔)を使いまわしていましたよ。社会人になって一つ増えました。八つ…

武田友紀『繊細さんの本』

バーナム効果という言葉がある。 星座占いとか血液型占いなどで「当たってる!」とかいったふうに思ってしまうあの現象である。そもそもそういった性格診断は誰にでも該当するようなあいまいな書かれ方がされているので、「当たってる!」と思うのは当然なの…

落合陽一『働き方5.0~これからの世界をつくる仲間たちへ』

『羅生門』を読む。 感想。 人間のエゴを感じた。 使い古された感想だ。 老婆にも正義があり、下人にも正義がある。正義はひとつではないことを知った。 これまた使い古した感想だ。 じゃあ、使い古されていない感想って何だよ。 YouTubeを始める。 メントス…

上田岳弘『ニムロッド』

ビットコインはナカモトサトシという謎の人物によって投稿された論文に基づき、2009年に運用が開始されたインターネット上で取引や新規発行ができる仮想通過のことだ。政府や中央銀行に管理されず、発行元がいないというのが大きな特徴だ。 まあ、ビットコイ…

細谷功『「具体⇄抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問』

早速だが、上の図を見ていただきたい。 「人間の知的能力と知の発展モデル」だ。 「横軸」は知識や情報の量的な拡大で、幅が広くなればなるほど知識や情報の量が増加していることを意味している。 「縦軸」は具体と抽象の軸で下から上に抽象度が上がっている…